メイちゃんと、チャイ②
来た時から各テーブルに並べられていた道具や茶葉やスパイスが動き出す。
眠っていたのが起きたみたいに、急に存在感を放って、色や香りがわたし達に向かう。
同じテーブルに座った4人は、それぞれ小さな役割を与えられ、ひとつのマサラチャイを作った。
スタッフの方が、『CTC(Crush(潰す) Tear(引き裂く) Curl(丸める))という製法で作られたアッサムの茶葉は、製造工程で丸められた茶葉の表面に紅茶のエキスが染み込んでいるので、お湯に入れた途端に、ぶわぁぁ〜、、と色がでますよ』と手振り付きで説明してくれるものだから、ワクワクする。
すり潰す。香る。注ぐ。入れる。煮出す。加える。沸騰させる。待つ。
その全てに、数字になった決まりがあって、慎重になる。家でつくる時とまるで違う感覚だ。
力を合わせて前進するわたし達。美味しいチャイはもうすぐそこだ。沸騰させて、待つ。
(待ってる間に余談でも。メイちゃんの役割は、出来たチャイをミルクポットから茶漉し経由で、カップに4等分するというやりがいのないものだったが、1番重要なんですよとコツを伝えられていた。それがあながち嘘でもなく、難しい作業であったため、メイちゃんはこぼしまくった。そして初めて会った同じグループの人にちょっと怒られた。私は心の中で、『あたしのメイちゃんにそんな態度をとるなんて、、やめてよ!ダメ!』と思ったけれど、もちろん声には出さなかった。)
ピピピピと、タイマーがなる。
できた。
メイちゃんが4つのカップにそそぎ(こぼしつつ)
わたし達は共に作ったチャイを一緒に飲んだ。
自分だけで作るチャイよりも、ずっと優しい丁寧な香りがした。
帰り道、関内のカレー屋さんで向かい合い、メイちゃんの話を聞きながら、カレーを食べた。
うん、
うん、
そうだったんだ
などと呟きながら、脳内でメイちゃんの人生を旅する。
カレー屋さんでもチャイを頼むと、若い子が高いところから注ぐパフォーマンスを見せてくれる。
さっき飲んだチャイとまた全然違う味がする。
わたし達は関内をぶらぶらと歩き、こよりで 使う食材を買ったりしながらそれぞれの家へ、帰った。
最終話へと、つづく。
writen by suzuko