メイちゃんとチャイ 最終話①
オリジナルのチャイが、完成しない。
2人で講座に行ったのは、小春日和の3月。
メイちゃんのチャイ開発は難航していた。 試作してくれたチャイをひとくち飲んだ時、わたしは1秒後に「うすい」と言った。
次の試作を飲んだ後には「ただ甘い」と言った。
スタッフがそれぞれ思うことメイちゃんに伝えた。
試作の感想が正直であることが重要なのを知っているから、皆正直に伝える。
それからしばらく、メイちゃんからチャイは出てこなくなった。
他のスタッフも何度も試作した。 そんなある日、こよりどうカフェに、代表がお客様を連れてランチをしにいらした。 お客様は長い間インドで暮らしていた自称『ほぼインド人』だという。 急遽本場仕込みのチャイについて教えてくれて、 チャイを作ってくれることになり、エプロンと三角巾をつけてキッチンに来てくれた。(その日、残念ながらメイちゃんは居なかった。)
わたしは彼女の全体的な雰囲気を捉える。
快活な感じだ。
今ここに来るまでに、どんなことを見てきただろうと想像する。
こよりにある、色々なスパイスを差し出すと、驚き、だけれどもその中からたった3つのホールスパイスを発掘し、とにかく刻もう、と言う。 お湯を沸かし、インドでの話を聞きながら、スパイスをとにかく刻む。 今作ってくれているのは、インドで色々な家庭のチャイを飲み、その中でも特に美味しかったというチャイのレシピだそうだ。
紅茶とミルクで煮出す。砂糖もしっかりと加え『うん、これで良いと思う』とチャイが出来上がった。 ひとくち飲む。 、、、おいしい、、おいしいっ!!
2回言う必要があるほど美味しかった。
たった3つのスパイス、、、!
翌日メイちゃんには、とにかくホールを刻むこと、たった3つのスパイスだったこと、だけを伝えた。
なにしろ『チャイは色々』とお客様が言っていたのだ。
メイちゃんのチャイは、メイちゃんのチャイでなくてはならない。
スタッフ皆に、相談しながら試作を繰り返すメイちゃんのこどもは、6歳、日本生まれ日本育ちだが、チャイの味がわかるようになってきたらしい。
メイちゃんに『チャイどう?』と声をかけると、『うん、、奥が深いね』とだけ、つぶやくようになっていた。